ラボグロウンダイヤモンドは本物?──宝石鑑定機関IGIに聞いてみた【独自取材・第1回】
「ラボグロウンダイヤモンドって、結局のところ本物なの?」
ラボグロウンダイヤモンドに興味を持った方が、最初に抱く疑問ではないでしょうか。人工だから偽物なのでは。天然と見分けがつくのでは。時間が経ったら劣化するのでは──。
こうした疑問に、売り手である私たちが「大丈夫です」と答えるだけでは、根拠として十分ではないと考えています。そこでVela Diamondは、世界最大級の宝石鑑定機関IGI(International Gemological Institute)のアジアパシフィックヘッドオフィスを訪ね、日本の消費者のみなさまから多く寄せられる疑問を直接ぶつけてきました。
IGIアジアパシフィックヘッドオフィスが日本の消費者に向けた取材に応じるのは、今回が初めてです。
お話を伺ったのは、IGIアジアパシフィックヘッドオフィスのRita Xu氏。聞き手は、IGIのダイヤモンド専門資格「Diamond Graduate(D.G.)」を保有するVela Diamond創業者の桜木麗佳が務めました。
第1回となる今回は、「そもそもラボグロウンダイヤモンドとは何か」という基礎知識編です。
※取材内容は2026年7月21日時点におけるIGIアジアパシフィックヘッドオフィスへの確認に基づいています。

ラボグロウンダイヤモンドは本物のダイヤモンドでしょうか?
桜木:日本では今でも、「ラボグロウンダイヤモンドは人工だから偽物なのではないか」という声を耳にすることがあります。まず最初に、この点について教えてください。ラボグロウンダイヤモンドは本物のダイヤモンドなのでしょうか。
Rita氏:はい、ラボグロウンダイヤモンドは本物のダイヤモンドです。ラボグロウンダイヤモンドは、天然ダイヤモンドと同じ化学組成・物理的特性・光学的特性を示します。違いは、天然ダイヤモンドは地球内部で長い年月をかけて形成される一方、ラボグロウンダイヤモンドは、人が管理した環境の中で成長します。
ラボグロウンダイヤモンドはジルコニアやモアサナイトと何が違うのでしょうか?
桜木:ラボグロウンダイヤモンドはキュービックジルコニアやモアサナイトと同じようなものなのでしょうか。
Rita氏:いいえ、まったく異なります。
ジルコニアやモアサナイトは、ダイヤモンドに似た外観を持っていますが、化学組成が異なる別の物質です。いわゆるダイヤモンドの模倣品にあたります。一方、ラボグロウンダイヤモンドは天然ダイヤモンドと同じ物質です。「合成」や「人工」という言葉から、模倣品と同じものだと誤解されることがありますが、両者はまったく異なります。
天然ダイヤモンドとラボグロウンダイヤモンドは、肉眼で見分けることはできるのでしょうか?
桜木:天然ダイヤモンドとラボグロウンダイヤモンドは、見た目だけで見分けることはできるのでしょうか。他の方が見たときに、ラボグロウンダイヤモンドだと分かってしまうことはあるのでしょうか。
Rita氏:プロ鑑定士であっても、肉眼だけで天然ダイヤモンドとラボグロウンダイヤモンドを判別することはできません。どれほど経験を積んだ専門家であっても、見た目だけで判別することは不可能です。正確に判別するためには、IGIのような宝石鑑定機関で、専門の分析機器を用いた検査を行う必要があります。
桜木:では、ジュエリーショップなどで見かけるダイヤモンドテスター(ペン型テスター)のような簡易的な機器でも判別することはできないのでしょうか。
Rita氏:できません。一般的なダイヤモンドテスターは、主に熱伝導性などを測定し、ダイヤモンドか類似石かを確認するための機器です。天然ダイヤモンドとラボグロウンダイヤモンドを区別するためのものではありません。
なぜなら、天然ダイヤモンドとラボグロウンダイヤモンドは基本的な特性が同じであるため、一般的なダイヤモンドテスターでは判別することはできません。
ダイヤモンドの模倣品(ジルコニアやモアサナイト)とダイヤモンドは見分けられるのでしょうか?
桜木:ジルコニアやモアサナイトなど、ダイヤモンドに似た外観を持つ石と、ダイヤモンドは見分けることができるのでしょうか。
Rita氏:専門知識を持つ鑑定士であれば、ルーペによる観察や専用機器を用いた検査によって判別できます。しかし、一般の消費者の方が見た目だけで、ダイヤモンドと外観の似た石を正確に判別することは容易ではありません。
そのため購入時には、売り手とは独立した信頼できる第三者機関によって、その石がダイヤモンドであることや品質が客観的に確認されているかを見ることが重要です。消費者が安心して選ぶためには、その証明となる鑑定書の有無を確認するのが最も分かりやすい方法です。
ラボグロウンダイヤモンドは時間が経つと変色・劣化するのでしょうか?
桜木:「人工的に作られたものだから、時間が経つと変色したり、輝きが失われたりするのではないか」という声も耳にします。実際はいかがでしょうか。
Rita氏:そのような心配はありません。
ラボグロウンダイヤモンドは、天然ダイヤモンドと同じ物質です。通常の使用環境において、時間の経過だけを理由にダイヤモンドそのものが変色したり、劣化したりすることはありません。お手入れ方法も天然ダイヤモンドと同様です。中性洗剤を薄めたぬるま湯でやさしく洗い、その後、柔らかい布でやさしく水分を拭き取ってください。
ラボグロウンダイヤモンドはどのように作られるのでしょうか?
桜木:ラボグロウンダイヤモンドの製造方法として、CVDやHPHTという言葉をよく耳にします。それぞれ、どのような方法なのでしょうか。
Rita氏:ラボグロウンダイヤモンドには、主にCVD(化学気相成長法)とHPHT(高温高圧法)の二つの製造方法があります。
CVDは、炭素を含むガスを分解し、炭素原子を少しずつ積み重ねてダイヤモンドを成長させる方法です。HPHTは、天然ダイヤモンドが地球内部で形成される高温・高圧環境を人工的に再現し、ダイヤモンドを成長させる方法です。どちらか一方が一律に優れているということはありません。いずれの方法でも、カラー、クラリティ、カットなどによって個々の品質は異なります。
ラボグロウンダイヤモンドは、最近生まれた新しい技術なのでしょうか?
桜木:ラボグロウンダイヤモンドは、ここ数年で生まれた新しい技術という印象を持つ方も多いと思います。実際には、いつ頃から研究され、ジュエリーとして使われるようになったのでしょうか。
Rita氏:ラボグロウンダイヤモンドの技術は、1950年代にはすでに研究が始まっており、決して最近生まれた技術ではありません。当初は主に工業用途で使用されていましたが、技術の進歩により、宝石として使用できる品質のダイヤモンドを成長させられるようになりました。
2000年代以降、宝石品質のラボグロウンダイヤモンドがジュエリー市場に徐々に流通するようになり、2010年代後半からは品質と供給が安定したことで、世界各国のジュエリーブランドが本格的に採用するようになっています。
まとめ:誕生の過程が異なる「本物のダイヤモンド」
今回の取材で確認できたポイントを整理します。
- ラボグロウンダイヤモンドは、天然ダイヤモンドと同じ化学組成・物理的特性・光学的特性を持つ、本物のダイヤモンド
- ジルコニアやモアサナイトなどの模倣品とは、まったく別の物質
- 天然かラボグロウンかは、プロの鑑定士でも肉眼では判別できない(専門機関の分析機器が必要)
- 時間の経過による変色・劣化の心配はなく、お手入れも天然ダイヤモンドと同様
- 技術としての歴史は1950年代からと長く、2010年代後半から世界のジュエリーブランドが本格採用
だからこそ、購入時には信頼できる第三者鑑定機関による品質証明(鑑定書)を確認することが、客観的な根拠に基づいてダイヤモンドを選ぶための大切な判断材料になります。
次回は、「では、どんなラボグロウンダイヤモンドを選べばいいのか」──購入時に確認すべきポイントと、天然ダイヤモンドと共通する品質評価基準「4C」について、引き続きIGIに伺った内容をお届けします。
お話を伺った方
Rita Xu(リタ・シュー)
IGI(International Gemological Institute)アジアパシフィックヘッドオフィス トレーニング部門 プロフェッショナルコース責任者/IGI特級宝石学講師。ダイヤモンド、カラーストーン、真珠の鑑定教育を専門とする宝石学のスペシャリスト。LVMH、リシュモン、ケリングをはじめとする世界的なラグジュアリーグループに対し、長年にわたりジュエリー専門研修を提供。FGA(英国宝石学協会)ディプロマをはじめとする複数の宝石学資格を保有し、大学での宝石学講義も担当している。
聞き手
桜木 麗佳(Reika Sakuragi)
Vela Diamond Founder/株式会社DiAnchor 代表取締役。IGIにてダイヤモンド分野の専門資格「Diamond Graduate(D.G.)」を取得し、天然・ラボグロウン双方のグレーディング、原石評価、カットプランニングまでを国際基準に基づいて学ぶ。その知見をVela Diamondの品質基準の策定、ダイヤモンドの選定、情報発信に生かしている。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA)。
Vela Diamondでは、全商品にIGIの鑑定書を標準付属し、D〜Eカラー・VS〜VVSクラスの品質基準を採用しています。


